脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の回復期リハビリ病院を選ぶポイント 〜現役理学療法士の視点から〜
- 家族が脳卒中(脳梗塞・脳出血)になって悩んでいる。
- 急性期病院から回復期に転院してほしいと言われた。
- 回復期リハビリテーション病院を選ぶポイントが知りたい。
親が脳卒中で入院してまだ2週間もたっていないのに回復期に転院してほしいと言われました。
せっかくなら、良い病院でリハビリを受けてほしいけど。。。
突然のことで、何から調べればよいかわかりませんよね。
良い回復期リハビリ病院を選ぶポイントを考えていきたいと思います!
本記事では、脳卒中(脳梗塞・脳出血)後、回復期リハビリテ−ション病院を選ぶ際のポイントについて考えていきたいと思います。
脳卒中(脳梗塞・脳出血)は突然の出来事であり、家族が脳卒中(脳梗塞・脳出血)になってしまった場合、家族のこれからに対する不安や心配はつきものです。
そんな中、脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の急性期を乗り越えて回復期リハビリテーション病院に転院することは、大きな大きな一歩です。
回復期リハビリテーション病院では、専門的なリハビリテーションやサポートが提供され、今後より良い日常生活を目指すための道筋が築かれます。
まず、回復期リハビリテーション病院とは具体的にどのような施設なのか?また、どのような専門職が関わるのか?を理解することが大切です。
さらに、より良いリハビリを行っていくには病院の施設基準やスタッフの質、リハビリテーションの実績なども重要な要素です。
後半では脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の回復期リハビリテーション病院を選ぶポイント を、現役理学療法士の視点から考えていきたいと思います。
- 病院機能評価を取得しているか?
- 土日・祝日も平日並のリハビリ対応をしているか?
- 在宅復帰率はどれくらいか?
- リハビリテーション実績指数はどれくらいか?
- リハビリテーション専門医師は在籍しているか?
- 認定・専門理学療法士(脳卒中)、認定作業療法士はどれぐらい在籍しているか?
- リハビリスタッフの数と平均経験年数はどれくらいか?
- 1日あたりのリハビリ提供単位数はどれくらいか?
- リハビリテーション室・病棟の雰囲気はどんな感じか?
- セラピストの早出・遅番制度(モーニングケア・イブニングケア)はあるか?
- 『認定理学療法士臨床認定カリキュラム施設』を参考にしてみる。
詳細を解説していきますね。
回復期リハビリテーション病院とは?
回復期病院と急性期病院の違い
回復期リハビリテーション病院は急性期病院とは異なり、自宅退院に向けて日常生活活動の回復を主眼に置いたリハビリテーションを提供する施設です。
急性期病院では病気や怪我に対する治療に従事しますが、回復期病院はその後の身体機能の回復や日常生活への復帰を支援し、自宅退院を目指していきます。
回復期リハビリテーション病院の特徴
回復期リハビリテーション病院は、急性期を脱してもまだサポートが必要な患者さんに対して、多くの専門職がチーム一丸となって、身体機能の向上や日常生活動作の習得を目的としたリハビリテーションを提供する場所です。
以下に、回復期リハビリテーション病院の特徴や機能をまとめます。
目的
- 患者さんが心身ともに健康状態を回復させ、日常生活や社会参加に適応できるよう支援することが主な目的です。
対象患者さん
- 重度の疾患、手術後、骨折、脳卒中などの後遺症を持つ患者さんが対象です。(詳細は下の図を参照)
- 意識レベルが安定しており、治療上の安定が確保されている患者さんが受け入れられます。
チームアプローチ
- 医師、リハビリテーションスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)、看護師、栄養士などの多職種チームが患者さんのケアを担当します。
- 患者さんの状態やニーズに合わせて個別のリハビリテーションプランが策定されます。
リハビリテーションプログラム
- 理学療法、作業療法、言語療法などの専門家による個別のリハビリテーションプログラムが1日最大3時間(脳血管疾患)提供されます。
- 身体機能の向上、日常生活動作の訓練、コミュニケーション能力の回復などが行われます。
退院時支援
- 患者さんが病院を退院する際には、家庭や施設での生活をサポートします。
- 家族や介護者への教育やサポートも提供されます。
回復期リハビリテーション病棟では、専門のチームによる継続的なケアとリハビリテーションプログラムが提供され、患者さんが自宅や社会に戻っていくことを支援します。
回復期リハビリテーション病院の入院の基準
回復期リハビリテーション病院への入院基準は、主に患者さんのリハビリテーションが必要かどうか専門の医師による判断が必要です。
また、以下の図のように厚生労働省が疾患などの条件や入院期間を定めています。
回復期リハビリテーションを要する状態 | 算定上限日数 |
脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント手術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、 多発性硬化症、腕神経叢損傷等の発症後若しくは手術後の状態又は義肢装着訓練を要する状態 | 150日 |
高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷 | 180日 |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節若しくは膝関節の骨折又は二肢以上の多発骨折の発症後又は手術後の状態 | 90日 |
外科手術又は肺炎等の治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後又は発症後の状態 | 90日 |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の神経、筋又は靱帯損傷後の状態 | 60日 |
股関節又は膝関節の置換術後の状態 | 90日 |
急性心筋梗塞、狭心症発症その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態 | 90日 |
まとめると、脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の患者さんは回復期リハビリ病棟に入棟した日にちから
- 高次脳機能障害がない方⇒最大150日(約5ヶ月)
- 高次脳機能障害のある方⇒最大180日(約6ヶ月)
入院することができます。
回復期リハビリテーション病棟に関わる専門職は?
理学療法士(Physical Therapist:PT)とは?
理学療法士は通常、Physical Therapist:PTとも呼ばれます。
基本動作(寝返り・起き上がり・座位)や立つ・歩くなどの動作動作の回復や維持、悪化の予防を目指して、運動療法や物理療法などを用いて、患者さんが自立した日常生活が送れるよう支援します。
作業療法士(Occupational Therapist:OT)とは?
作業療法士は、Occupational Therapist:OTとも呼ばれます。
PTが歩行や階段等の下肢や基本動作を中心に評価するのに対して、OTは上肢や日常生活活動(トイレや整容動作等)を中心に評価することが多いです。
作業療法は、心身機能の回復や維持、低下を防ぐ手段として作業を活用し、また作業そのものを練習しながら、人々の生活に欠かせない活動の能力を向上させること支援します。
言語聴覚士(Speech Therapist:ST)とは?
言語聴覚士は、Speech Therapist:STとも呼ばれます。
STは話す・聞く、食べるのスペシャリストです。
脳卒中後の失語や高次脳機能障害によって、コミュニケーションに問題がある方に検査・評価を実施しながら訓練、指導を行ったり、摂食・嚥下の問題にも対応します。
回復期リハビリテーション病院を選ぶポイント
ここからは回復期リハビリテーション病院を選ぶポイントについて考えていきたいと思います。
前半では①施設基準から考えるポイントについて解説していきます。
後半では、②理学療法士である私個人の考えをお話したいと思います。
①施設基準から考える回復期リハビリテーション病院を選ぶポイント
回復期リハビリテーション病棟の施設基準とは?
回復期リハビリテーション病棟には施設基準というものが1〜5まであります。
施設基準の項目には
- 職員の配置に関する施設基準
- リハビリテーションの提供体制等に関する施設基準
- リハビリのアウトカム(結果)に関する施設基準
があります。
施設基準1を満たすにはより厳しい条件をクリアしていなければなりません。
評判のいい病院の特徴とは?
皆さんが病院を選ぶ際の基準は何でしょうか?
有名な先生がいる病院でしょうか?
Googleの口コミやサイトの口コミ、地域の評判などでしょうか?
1つの知識として知っておいてほしいことがあります。
病院を評価する第三者機関の存在です。
【病院機能評価】というものがあります。
病院機能評価は病院の質改善活動を支援するツールです。
我が国の病院を対象に、組織全体の運営管理および提供される医療について、当機構が中立的、科学的・専門的な見地から評価を行います。
当機構は、病院機能評価を通じて、病院の質改善活動を支援しています。
病院機能評価に認定されている病院は、 第三者の視点から様々な問題点を洗いだしてもらうことで、病院全体・スタッフ一人ひとりが医療の質の部分で改善へ向けて意識や動きが高まっていると考えられます。
2024年の診療報酬改定から、施設基準1には第三者評価を受けていることが望ましいが追加されました。
土日・祝日の対応は? 365日リハビリについて
施設基準の1・2を満たす条件として「休日のリハビリテーション」があります。
土日・祝日の対応は、患者さんがより充実したリハビリを継続して受けられるかどうかを示す重要なポイントです。
病院によっては土日・祝日はセラピストの出勤人数が少なく必要最低限の介入しかできない場合もあります。(平日は3時間、休日は40分等)
365日体制で土日・祝日も平日と同じような体制でリハビリテーションを提供している病院は、充実したリハビリが受けられる可能性が高いです。
在宅復帰率とは? 自宅等に退院する割合
在宅復帰率は、患者さんがリハビリテーションを経て自宅等に復帰する割合を示す指標です。
高い在宅復帰率を持つ病院は、患者さんの在宅への復帰を支援する体制が整っている可能性が高いと言えます。
注意点として『等』には「在宅系施設への退所」も含まれる点が挙げられます。
リハビリテーション実績指数とは?
リハビリテーション実績指数は、施設のリハビリテーション成績を示す指標です。
患者さんの回復率やリハビリテーション効果を客観的に評価し、施設の実績を示す重要なデータとなります。
②現役理学療法士の視点から考える回復期リハビリテーション病院を選ぶポイント
ここからは現場で14年間、理学療法士として働いてきた私が考える回復期リハビリテーション病院を選ぶポイントを整理していきたいと思います。
リハビリテーション専門医は在籍しているか?
リハビリテーション専門医師は、リハビリテーション医療に精通した医師です。
回復期リハビリテーション病棟には専任の常勤医師1名の登録が必要です。
しかし、これはリハビリテーション専門医である必要はありません。
内科医や整形外科医、脳神経外科医等、リハビリが専門外の医師でも登録可能です。
なので極論を言うと、リハビリの処方箋(リハビリ開始の指示)を出した後、リハビリ室に1回もリハビリの様子を見学に来ず、リハビリの内容に関してはセラピスト任せ、まったく指示を出さない医師もいます。
リハビリテーション専門医は、リハビリテーションチームの一員として、他の医療専門家やリハビリテーションスタッフのリーダーとして、総合的なケアを患者さんに提供してくれます。
なので、リハビリテーション専門医が在籍している回復期病院は質の高いリハビリが提供される可能性が高いと考えられます。
認定・専門理学療法士(脳卒中)、認定作業療法士は在籍しているか?
認定・専門理学療法士や認定作業療法士は、理学療法士や作業療法士の中でも特に高いスキルを持つ専門家で、質の高いリハビリを提供することを目的とした資格です。
日本理学療法士協会や日本作業療法士協会が構築している制度で、取得するには様々な研修や試験に合格しなければなりません。
一般的なセラピスト(理学療法士や作業療法士)は国家試験合格後は資格の更新制度等は特にありません。
卒後の臨床技能は、個人の努力や経験によって大きく左右される職種です。
認定・専門理学療法士や認定作業療法士は、5年毎の更新制度が設けられています。
認定・専門理学療法士や認定作業療法士が多く在籍している回復期病院では、質の高いリハビリが提供される可能性が高いと考えられます。
リハビリスタッフの数と平均経験年数はどれぐらいか?
リハビリスタッフの数と平均経験年数は、施設のリハビリテーション体制を評価する重要なポイントです。
先ほども述べたように、セラピストの質は個人の努力や経験年数によって大きく差があります。
しかし、経験年数だけ多く、自己研鑽していないセラピストも多い現状なのが難しいところです。
先程の認定・専門理学療法士や認定作業療法士を取得しているセラピストが、質の高いリハビリを提供してくれる1つの判断基準になると思います。
スタッフの数に関しては、土日・祝日のリハビリ時間にも影響してくる部分です。
スタッフ数が多いほうが週の休みが分散され、休日のリハビリ時間も多く提供される傾向にあります。
1日あたりのリハビリ提供単位数はどれぐらいか?
一日あたりのリハビリ提供単位数は、患者さん一人あたりに提供されるリハビリテーションの量を示す指標です。
回復期リハビリテーション病棟では、脳卒中(脳梗塞・脳出血)の患者さんに対して一日最大3時間(9単位)のリハビリを提供することができます。(2024年4月時点)
患者さんの全身状態や意欲によっても変わってきますが、できるだけ多くの時間をリハビリに当てることができれば、それだけ症状の回復(脳の可塑性)が期待できます。
先程のスタッフの数とも重なる部分ですが、平日は毎日3時間、休日も3時間リハビリを提供してくれる回復期病院は、多くのリハビリ提供単位数を確保することで、患者さんに対して効果的なリハビリテーションを提供していると考えられます。
リハビリテーション室・病棟の雰囲気はどんな感じか?
もし急性期病院から回復期に転院する前に、回復期病院を見学できるのであれば、1度リハビリテーション室と病棟の雰囲気を見ておくことをお勧めします。
リハビリ室に関しては、1時間のリハビリ時間の殆どをベッド上で寝ながら終わってしまう病院はおすすめできません。
病棟に関しては、看護師さんが患者さんと一緒に病棟リハビリを頻繁にしている雰囲気が望ましいです。
セラピストが回復期病院でリハビリを提供できるのは最大3時間(9単位)というのが決められたいます。
それ以外の時間は病棟やお部屋で過ごされることが多いのですが、リハビリ以外の時間も病棟で立位練習や歩行練習を行える環境は症状の回復に対して非常に大切になってきます。
セラピストの早出・遅番制度(モーニングケア・イブニングケア)はあるか?
脳卒中片麻痺の患者さんでは、リハビリ中やリハビリ室ではできる動作(その患者さんの中で一番良いパフォーマンス)が、病棟(実際の生活場面)ではできなくなってしまうことが多くあります。
回復期病院の中には、セラピストの早出・遅番制度(モーニングケア・イブニングケア)を取り入れ、リハビリ室ではなく、実際の生活場面の環境を重視しながらリハビリ介入することがあります。
実際の生活場面を評価することによって、リハビリ室では発見できない問題点を見つけることができます。
セラピストの早出・遅番制度(モーニングケア・イブニングケア)を取り入れている病院はそういった細かい部分にも力を入れている可能性が高いと言えます。
③『認定理学療法士臨床認定カリキュラム施設』を参考にしてみる
認定理学療法士臨床認定カリキュラム施設とは?
認定理学療法士を新規取得するためには、全国の各地にある認定理学療法士臨床認定カリキュラム教育機関で臨床カリキュラムを受講し、要件を満たす必要があります。
教育機関となる施設は、日本理学療法士協会が審査の上、認定しています。
認定理学療法士臨床認定カリキュラム施設には認定理学療法士を指導できる『スペシャリスト』が在籍している可能性が高いです。
また、認定施設には認定理学療法士を取得しているセラピストが多く在籍している可能性も高いと考えられます。
まとめ
回復期リハビリテーション病院を選ぶ際には、『施設』の基準や評判、『セラピスト』や『病院スタッフ』の質などを考慮することが重要です。
また、ご家族の回復と日常生活への復帰をサポートするためには、できるだけ『質』の高いリハビリテーションを提供してくれる回復期リハビリテーション病院を選ぶことが大切です。
- 病院機能評価を取得しているか?
- 土日・祝日も平日並のリハビリ対応をしているか?
- 在宅復帰率はどれくらいか?
- リハビリテーション実績指数はどれくらいか?
- リハビリテーション専門医師は在籍しているか?
- 認定・専門理学療法士(脳卒中)、認定作業療法士はどれぐらい在籍しているか?
- リハビリスタッフの数と平均経験年数はどれくらいか?
- 1日あたりのリハビリ提供単位数はどれくらいか?
- リハビリテーション室・病棟の雰囲気はどんな感じか?
- セラピストの早出・遅番制度(モーニングケア・イブニングケア)はあるか?
- 『認定理学療法士臨床認定カリキュラム施設』を参考にしてみる。