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脳卒中(脳梗塞・脳出血)退院後のトイレ方法:選択肢と注意点について

@brehacare
記事を読んでほしい方
  • 家族が脳卒中(脳梗塞・脳出血)になってしまった。
  • 病院から退院の準備を進めるように言われた。
  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血)後のトイレ方法(夜間)について悩んでいる。

親が脳卒中になって入院しており、今月、自宅に退院します。

退院後、夜間のトイレ方法をどうしていこうか悩んでいます。

イルカさん
イルカさん

ポータブルトイレや尿器、オムツなどそれぞれの特徴を知ることが大切です。

一緒に考えていきましょう。

理学療法士 おとど
理学療法士 おとど

はじめに

脳卒中(脳梗塞・脳出血) 退院後のトイレ方法の選択肢と注意点について考えてみたいと思います。

脳卒中(脳梗塞・脳出血)を経験した方が退院後に直面する日常生活上の課題の1つに、トイレ動作があります。

脳卒中後には運動麻痺や排尿障害・頻尿などが起こりやすい為に、トイレに行くことが難しくなるケースが多いです。(夜間頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁)

また、退院後のトイレ介護においては、日中と夜間での動作能力に変動が見られるため、ケアや適切な道具の選択が重要です。

ポータブルトイレや尿器、おむつなどさまざまな選択肢がありますが、その選択方法や注意ポイントについて知ることが大切です。

介護者と患者さんが協力し合いながら一緒に適切な方法を見つけていくことで、安心して生活する土台を築くことができるでしょう。

脳卒中(脳梗塞・脳出血)退院後の生活におけるトイレ方法について考える

脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の排尿障害とは?

脳卒中(脳梗塞・脳出血)の後遺症として排尿障害が起こることがあります。

排尿障害は、排尿のコントロールが難しくなる状態を指し、頻尿になりやすい、尿意を感じても我慢できずにトイレに間に合わない等が挙げられます。(夜間頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁等)

また、脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の片麻痺により、入院直後トイレ自体に行けない事からオムツ自体に慣れてしまうケースもあります。

脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の入院生活では様々な要因が重なり合い、排尿障害が起こりやすいです。

脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の排尿障害はなぜ起こるのか?

脳卒中による梗塞や出血が、脳の膀胱を支配している中枢に影響を与えることで排尿障害が生じることがあります。

脳卒中(脳梗塞・脳出血)後は排尿反射が亢進する場合があり、膀胱に十分な尿を貯めることが難しくなります。

また、わずかに尿が溜まっただけで尿意が生じてしまう場合もあります。

それ以外にも、脳卒中(脳梗塞・脳出血)後は再発防止のため、入院中から水分補給を促されることも多く尿の回数自体も増える傾向にあります。

脳卒中(脳梗塞・脳出血)後のトイレに行く事の難しさについて

脳卒中(脳梗塞・脳出血)を経験した人は、トイレに行くこと自体に難しさを感じることがあります。

トイレ動作を要素で分解して見てみると、以下のようになります。

トイレ動作自立に向けて必要な要素
  • 尿意を適切なタイミングで感じる事ができる。
  • トイレまで移動できる。
  • 移動が車椅子の場合ブレーキ・フットレストを確認できる。
  • 便座の前に立ち上がれる。
  • ズボン・パンツを、バランスを崩さないで下ろせる。
  • 便座に着座できる。
  • 便座に安定して座っていられる。
  • 腹圧をかけて排尿・排便できる。
  • ペーパーを適量、抵当なサイズにカットできる。
  • 清拭ができる。
  • 立ち上がって、バランスを崩さずにズボンが挙げることができる。
  • 車椅子の場合、車椅子に安全に移乗できる。
  • 手を洗うことができる。

このように、普段何気なく行えているトイレ動作も、細かい要素に分解してみてみると、脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の患者さんにとって難易度が高いことがわかります。

脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の患者さんでは、片麻痺(片方の手足が動かしにくくなってしまう症状)や高次脳機能障害等の影響も加わり上記の動作の何処かに困難さが生じることが多いです。

入院中の『トイレ自立度』を知ろう

脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の入院中、『日中』と『夜間』の『トイレ自立度』を把握することが重要です。

入院中にできていない動作を、自宅に帰ってからいきなり行うことは難しいです。

入院中のトイレ動作で、どの部分に介助が必要だったのか?日中と夜間でどのような違いがあったのか?を知ることは大切です。

病院スタッフや理学療法士のサポートを受けながら、病院でのトイレ動作の実情を理解し、退院後の生活準備を行いましょう。

退院後のトイレ自立度とトイレ方法の選択

退院後のトイレ方法を選択する際には、患者さんの状態や介護者の能力を考慮する必要があります。

自立度が高い順に挙げると①②は自宅トイレ、③④はポータブルトイレ、⑤は尿器、⑥はオムツになります。

①自身でトイレに行って排尿・排便ができる。(自立)

②介護者と一緒にトイレに行き、トイレ動作に必要な要素の何処かに介助を必要とする。(介助が必要)

③自身でポータブルトイレに移乗し、排尿・排便ができる。(自立)

④ポータブルトイレへの移乗を介護者に助けてもらい、トイレ動作に必要な要素の何処かに介助を必要とする。(介助が必要)

⑤自身で尿器を使用し排尿できる。(自立)

⑥オムツを使用する。(介助が必要)

それぞれに長所・短所があり一長一短になってくるので、それぞれのデバイスの特性や使い勝手を理解して、最適な方法を選ぶことが重要です。

退院後のトイレでの注意ポイント

夜間のトイレ介護の大変さ

夜間のトイレ介護は、介護者にとって肉体的・精神的な負担が大きいことがあります。

先ほども述べさせていただきましたが、脳卒中(脳梗塞・脳出血)後は様々な要因が重なり夜間も頻尿になりやすい傾向にあります。

多い人では2時間に1回ぐらい行く方もいらっしゃいます。

そのため、夜間のトイレ介護は寝不足の原因にもなり、非常に負担が大きいと言われています。

入院中の夜間のトイレ回数は退院前にチェックしておいてください。

夜間と日中で運動能力は変化する!

退院後の患者さんの運動能力は、夜間と日中で異なることがあります。

特に夜間は眠気や疲労の影響、体が温まっておらず動きが固くなる傾向にあり、動作が制限されることが多いため、トイレ介護においてもその点を考慮する必要があります。

日中は歩いてトイレまで行くことができる方でも、夜間は転倒のリスクが高まりやすいと言われています。

入院中の日中と夜間のトイレ動作能力の違いは確認しておきたいところです。

トイレの手すりは何処に設置すれば良いのか?

トイレ内の転倒リスクを減少させる意味でも手すりの設置は非常に有用です。

手すりの設置には①工事で手すりをつける場合と②据え置きのもので代用する場合の2パターンがあります。

トイレの広さや向き、患者さんの麻痺側(左右)の違いによっても適切な手すりの位置は変わってくるので注意が必要です。

ポータブルトイレの匂いと後片付けについて

ポータブルトイレを使用する際に気になるのが匂いと後片付けの問題です。

ポータブルトイレは、水を使わないバケツ型タイプのものが多く、使用を続けていくうちに匂いが染み付いてしまってり、匂い自体が室内にこもってしまうことが多いです。

使用前、バケツ内に少し水を貯めたり、トイレットペーパーを少量敷いておくと匂い対策になります

空気清浄機や消臭剤を置くことも効果的だと思います。

ポータブルトイレは清潔な状態を保つことも重要であり、介護者は適切な手順と衛生管理を徹底する必要があります。

尿器の種類は沢山ある

尿器とは、トイレに行かなくても、寝たままや座ったままの状態で、排泄する事ができる物です。

尿器にもさまざまな種類があり、使用する際には患者さんの性別や体型、使用の容易さなどを考慮して選択する必要があります。

片麻痺の患者さんでは、片方の手足が動かしにくくなるため、尿器自体を使用することが困難な場合もあります。

動作能力(ズボンの上げ下ろしができるか等)や尿漏れの程度、排尿の頻度に合わせて適切な尿器を選ぶことが大切です。

オムツとリハビリパンツの違いについて

オムツとリハビリパンツは、排泄物を吸収するための下着ですが、その使い方や目的に違いがあります。

オムツのメリット

  1. 吸収力が高い: リハビリパンツに比べ多くの排泄物を吸収できるため、長時間の使用が可能です。
  2. 漏れ防止機能が優れている: オムツはリハビリパンツに比べ漏れを防ぐためのガードがしっかりしており、安心して使用できます。
  3. 取り扱いが簡単: おむつは粘着テープで固定できるため、着脱が容易です。特に介護者にとって便利です。

オムツのデメリット

  1. 通気性が低い: 長時間使用すると蒸れやすく、肌トラブルを引き起こしやすいです。
  2. 自己排泄の意識が薄れる: オムツを常用すると、排泄のタイミングを意識しにくくなり、排泄自立の妨げになることがあります。また、オムツに慣れてしまうことで排泄自立への意欲も低下してしまう傾向にあります。
  3. 費用が高い: リハビリパンツに比べ費用が高いです。

リハビリパンツのメリット

  1. 通気性が良い: 通気性が高いため、オムツに比べ長時間の仕様でも肌トラブルが起きにくいです。
  2. 排泄自立のサポート: リハビリパンツはトイレに行く習慣を身につけやすく、自己排泄の自立を促進します。
  3. 着脱が容易: パンツ型であるため、自分での着脱がしやすく、使用者の自立をサポートします。片麻痺患者さんであっても、練習によっては片手で上げ下げが可能になることもあります。

リハビリパンツのデメリット

  1. 吸収力が低い: オムツに比べて吸収力が低いため、多量の排泄物には向いていません。
  2. 漏れやすい: 吸収力が低いため、オムツに比べ漏れやすくなることがあります。

上記のメリット、デメリットを簡単にまとめると

  • オムツは、特に介護が必要な場合や長時間の使用が求められる場合に適しています。しかし、通気性が低く、自己排泄の意識が薄れる可能性があります。
  • リハビリパンツは、排泄自立を目指す方や、短時間の使用に向いています。通気性が良く、着脱が容易ですが、吸収力が低いため、漏れやすくなる可能性があります。

どちらを選ぶかは患者さんや介護者の状態や生活環境に応じて、場面場面で適切なものを選ぶことが重要です。

オムツ交換は難しい?

片麻痺患者さんのオムツ交換は、通常のご高齢の方のオムツ交換と比べていくつかの特別な配慮が必要となり、少し難しいと感じるかもしれません。

しかし、適切な技術と知識を持つことで、一般のご家族でも安全かつ効果的に行うことが可能だと思います。

片麻痺患者さんのオムツ交換は、特に初めての方には難しく感じることがあるかもしれませんが、練習と経験を積むことで必ずスムーズに行えるようになります。

また、退院の前に必要に応じて看護師や介護の専門家から指導を受けることもできるので、積極的に病院スタッフに声をかけてほしいです。

夜間のパットの吸収力の違いについて

夜間のパットは、尿漏れを防ぐために重要な役割を果たします。

オムツパットにも様々な種類や吸収力の違いがあります。

夜間の尿量が多い方は、、高い吸収力と快適性を兼ね備えた夜間用パットを使用することで、安心して一晩を過ごすことができます。

介護者も夜間オムツ交換をしなくて良くなるので、介護者の負担も軽減できます。

本人と介護者間で折り合いをつける

トイレ介護においては、本人と介護者間でのコミュニケーションや理解は非常に大切です。

本人は、夜もトイレに行きたい。。

家族としては、トイレのたびに起きて介護するのは大変だし、転倒が心配だから夜はオムツにしてほしい。。

お互いの立場や意見を尊重し合い、それぞれのメリット・デメリットやリスクを理解したうえで、落とし所を探していく努力が必要だと思います。

協力して問題を解決するための良好な関係を築いていくことも大切です。

まとめ

脳卒中患者さんの退院後トイレ介護は、患者と介護者の協力と理解が欠かせません。

まずは、トイレの動作能力を知ることが大切です。

理学療法士 おとど
理学療法士 おとど
トイレ動作自立に向けて必要な要素
  • 尿意を適切なタイミングで感じる事ができる。
  • トイレまで移動できる。
  • 移動が車椅子の場合ブレーキ・フットレストを確認できる。
  • 便座の前に立ち上がれる。
  • ズボン・パンツを、バランスを崩さないで下ろせる。
  • 便座に着座できる。
  • 便座に安定して座っていられる。
  • 腹圧をかけて排尿・排便できる。
  • ペーパーを適量、抵当なサイズにカットできる。
  • 清拭ができる。
  • 立ち上がって、バランスを崩さずにズボンが挙げることができる。
  • 車椅子の場合、車椅子に安全に移乗できる。
  • 手を洗うことができる。

どの部分ができて、どの部分に介助が必要なのか?を理解した後は、病院での昼間と夜間の『トイレ自立度』を把握します。

『トイレの自立度』を参考に、退院後のトイレ方法を選択していきます。

理学療法士 おとど
理学療法士 おとど
トイレ自立度

①自身でトイレに行って排尿・排便ができる。(自立)

②介護者と一緒にトイレに行き、トイレ動作に必要な要素の何処かに介助を必要とする。(介助が必要)

③自身でポータブルトイレに移乗し、排尿・排便ができる。(自立)

④ポータブルトイレへの移乗を介護者に助けてもらい、トイレ動作に必要な要素の何処かに介助を必要とする。(介助が必要)

⑤自身で尿器を使用し排尿できる。(自立)

⑥オムツを使用する。(介助が必要)

日中と夜間ではトイレ動作の能力に違いが見られる方が多いので注意が必要です。

適切なトイレ方法や器具の選択、衛生管理の徹底などを通して、快適で安全なトイレ生活を実現するために努めましょう。

今回の記事が、皆さんのトイレ介護における知識向上に繋がり、QOL(生活の質)を向上させる手助けになれば幸いです。

理学療法士 おとど
理学療法士 おとど

ABOUT ME
おとど
おとど
理学療法士 14年目
2010年に理学療法士免許を取得。同年より理学療法士として病院に14年勤務する。急性期病棟、一般病棟、回復期病棟、医療療養型病棟、外来リハビリ、生活期リハビリ等様々な分野でのリハビリを経験。 2018年に脳卒中認定理学療法士を取得。 多く担当する疾患は脳卒中(脳梗塞・脳出血)や整形疾患の患者さん。
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